sacom works【さこむわーくす】
 刺繍技術から見た「失敗しにくいパッチ・ワッペンデザイン術」その5
 〜完全刺繍の萌えミリタリーパッチを作る!〜
 手書きのお客様はもちろん、グラフィックソフトをお使いのお客様まで必見!!
 糸と記事で再現する刺繍です。刺繍にあったデザインをすることで、より美しい仕上がりになります。
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この記事はsacom worksブログ
(パッチ・ワッペン製作sacom works)に掲載した
「萌えミリパッチを作る」を再編集したものです。

コンテンツ コンセプト
○はじめに
○ストーリー
【注意!】
○刺繍の制限
○下書き
○サイズ
○外周処理
○フォント
○サインペンで
清書する方法
○着色の注意
○入稿形式
○修正の苦悩
 
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(8)色の設定 〜色数増加=コスト高。難しい色は手配できない場合もある〜
 
刺しゅうは糸と生地の組み合わせ。
手配できない色もあるのですが、糸の色は600色×3種類以上あります。
 
 
生地の色は少ないので、シンプルな色にまとめていただいたほうがいいかもしれないですね♪
 
ペン清書が完成したら、コピーして着色します。原画は残しておいてください。
着色は色鉛筆でも構いませんが、できるだけハッキリした色で着色します。
「この部分はこの色」という注釈を入れていただけると、後ほど作業しやすいです。

 プロの方は色の表示を入れて大変わかりやすいのですが、
特殊な色にすると「生地がない」「糸がない」ということになりがちです。
 できるだけ基本色でまとめるのがスムーズです。


【色の選択】

 糸と生地見本の一部。
 糸はこれ以上にあり(厳密には1000色以上)選択肢の幅が広いものの、難しい色設定にすると「色がない」ということにも。また、生地に色を重ねるので、完全な色は出ないこともあります。

 対して生地色は非常に少なく「基本色」のみ取り扱いがあります。
 OD等ミリタリーカラーについては、sacom worksにてチョイスした「これは使える」というものしか提供していません。また、迷彩生地については問屋さんの扱い状況により在庫が変わります。

 ちなみに、糸の色見本帳は¥2500〜¥5000くらいします。
 高価なものですので、基本貸し出しはしておりません。ご了承ください。

 刺繍糸はメーカー別で考えた場合、厳密には1000色以上ありますが、意外とマッチした色がない場合もありますし、ベース生地にあたる部分に難しい色をあてがわれた場合、全面を刺繍することになるためコストを跳ね上げたり、製品全体に悪影響を与える(変形が強くなる・刺繍に刺繍を重ねるので、模様が甘くなる)場合さえあります。
 あと、ベース生地との兼ね合いで、発色の具合が微妙に変わります。
 (萌えキャラパッチを作る場合、血色が悪くなるので青ベースは避けたいところです)

 なお、
ご依頼にあたって手書き図案を送られる場合は、スキャナーで読み込むか、明るい場所で正面から写メを取っていただいてメール。
 または郵送の場合はカラーコピーで送っていただけますようお願いいたします。 原画はお客様で保存されてください。


 今回製作した「めいどいん沖縄」パッチについては、文字が入る「帯」の部分を生地露出させることで、小さな文字(5mm)の発色をよくして、刺繍面積を下げ、変形対策も兼ねるという方法を使っています。
 こうした判断は刺繍店・職人さんによって考え方がまちまちなので「これはこう縫うべき」という事でもありません。
 それが刺繍製品の面白さの一つでもあります。



   
刺しゅうソフトで作りこんだデータに色を合わせていく過程です。
実際の色とは異なりますけど、イメージがだいぶはっきりしてきました。

色だけではなく、生地の縫い方向とか順路も決めているんです♪
完成したデータから作成したイメージ画像】

このとおり縫われるわけではありません。
糸が縮む分太らせたり、近い色を当てたりしています


なお、周囲の文字の「帯」部分は刺繍されず、生地が露出する形になります。
コストが高くなってしまう図案ではありますが、刺繍がまんべんなく行われることで変形対策になっているという寸法です。
 
 
なお、データイメージ=サンプルや製品ではありません

 縮みを考慮しながらデータを作り、それをJPEG画像化しただけですので、実際の刺繍より線が太くなっています。
 刺繍糸や生地は見る角度で色合いが変わり(やや反射するため)、ベタっとした色合いになりにくいケースが多いので、色あわせをすることも難しいのです。
 また、刺繍糸等の材料も、厳密には生産ロットによって微妙な色合い等の誤差があります。
 イメージ画像は調整用の
”参考画像”という程度ですので、郵送するサンプルにてご確認いただければと思います。


ソフトで作った画像=実際のサンプルじゃないんですね・・・
 
 
糸とか生地の質感、光沢の具合とかもあるから・・・

刺しゅうは”糸と生地の組み合わせ”。
サンプルは実際に刺しゅうした製品を郵送させていただいているの。


(9)イラストレーター・フォトショップその他グラフィックソフト使用上 ご入稿の注意

イラストレーターなどのソフトで作ったデータそのままに出来上がるって思われているお客様も多いようなんですけど・・・
刺しゅう製品ということを念頭に作画していただきたいのです。
 
 
変形とか糸の流れとか、色々考えながら作るわけですから、グラフィックソフトのとおりに仕上がらないんですよね。
 
そうにゃ。
イラレから刺しゅうに自動変換するソフトは高価だし、材料の質感とか糸の引っ張りとか順路もあるから、絵のとおり縫えるはずがないのにゃ。
それを考えながら一から作りこむにゃ。
データはJPEGかPDFで十分にゃ。
 
 
 
グラフィックソフトと刺しゅう製品は別物と考えていただければ、グラフィックソフトを確実に活用いただけますね。

 
 なお、印刷業界などはグラフィックソフトの「イラストレーター」が基準になってるかと思われますが、実は私は一切使ってません。
 イラレを使っていないことに同業者の間から驚かれたりするのですが、 先に書いたとおり、
「デザインありき(イラレありき)で考えると、刺繍は絶対に上手くいかない」が経験上の持論です。

 刺繍しかやらないので別に苦労することもなく、データを受け取りするだけのためにお金をかけるのはいかがなものかと思ったりもします。
 
お金かければできる事ですが、その費用はお客様へ請求するわけですので・・・データ受け取りだけのために、コストを引き上げたくないわけです。
 ステッカーや印刷物に手を伸ばすことも考えていないので、今のところsacom worksで要していないソフトなのです。
 そのためデータの取り扱いもありませんので、ご不便おかけいたしますが、
JPEGまたはPDFでご入稿お願いいたします。


 イラストレーターを刺繍データに変換することのできるソフトがあるのですが、大変高価なうえ、力学特性その他いろいろを考慮しながらデータを作る必要があるわけですから、読み込めばできるという簡単なものではないのです。印刷だってインクの調合の職人さんとかいるわけですからね。もちろん、できるだけデータに近い形で作る努力をいたします。



企業のユニフォーム用ワッペンの依頼を受けることがあるけどにゃ。
最近のロゴマークは
線が細かったりグラデーションが複雑すぎて、刺しゅうできないと判断することが多いにゃ。

針より細い線とか、ぶっちゃけ無理だにゃ・・・。
 
 
せっかくロゴマークを作ったのに、もったいないですね・・・
デザイナーさんには、刺しゅう化するかもしれない、ということを念頭にデザインしていただくとよさそうですね。

(10)着手後の修正作業  〜パズル・迷路を紐解きながら〜

 
 
「刺繍データはどうやって作られるのか?」ということについて、簡単に説明を述べさせていただきたいと思います。
 刺繍の場合、(9)で解説したようにデータ変換→刺繍という簡単な作業でできるものではなく、下記のような事項を考えながら作っていきます。
 考えることはまだまだありますが、企業秘密の部分もありますので少しだけ紹介してみましょう。

☆どの程度変形するのか。その対策。
☆どこからどこに縫い進めるのか。効率よく美しい”縫い順路”。
☆縫い方の方向。美術的要素と変形とのバランス設計。


 これらは一般的なグラフィックソフトで全く考慮する必要のない条件ですが、刺繍においては常に考えなくてはならない要素です。変形を予測しながらデータを作っていくので、イラレで精密にデザインしたとしても、厳密にはそのとおりにはならないというわけです(イラレに頼りたくない理由でもあります)。


イラストが変わっちゃうと、縫い方だけじゃなくて、糸の順路も考えて作り直しないんですね・・・

迷路の中で作業してる感じですね(汗)
 
 
途中で部品を区切って、バイパス作って新しいパーツを差し込んだりするにゃ。
線の形はもちろん、面の部分の刺しゅうの形も調整したり、ホント大変な作業なのにゃ。

 
 特に縫う順路は、まるでパズルや迷路のようなもの
で、簡単な図案であっても頭が痛くなる要素でもあります。
 今回の「めいどいん沖縄パッチ」の場合、150点くらいのパーツを作りこんで、それぞれのパーツに始点終点を設定し、できるだけスムーズに縫えるよう作るわけです。

刺繍用ソフトの画面
仕上げ段階の微調整の様子。丸いポイント複数が付いているのが、一つのパーツ。
糸の順路も考えながら、それぞれのデータを作っています。
パーツを最適な状況になるよう並べたり、複数色の場合、パーツを重ねていきます。
これを手直しするとなると、部品のどこを修正するか調べたり、パーツを分解したり・・・かなりツラい作業です。


 これを考えながら作ったデータ。修正作業は単にイラストを変更するというものではない、大変な労力です。
 自動的にソフトが考えてくれるやり方もあるのですが、プログラムにも限界があり、なかなか上手くいきません。なので自分で考えて順路等を作らなくてはなりません。
 修正すべきパーツを探すところからはじまり、順番や糸の流れをチェックし、時には流れをカットしたり、渡り糸(びょーんと伸びる余計な糸)が出ないように針を運ぶバイパスを作ったりと、いろんな事を考えなくてはなりません。
「何度も下書きをして、構図を決めてほしい」
「チーム・メンバー内で予め図案を吟味してほしい」

 というのも、図案変更があった場合、単に「絵を手直しする」というものではないことを踏まえたうえで、スムーズな作業をするうえでご協力いただきたいのです。

 
  ご入稿前、ご入稿後のチーム内での調整、よろしくお願いしますね。
 
チームのワッペンは好みが分かれるから、図案がなかなか決まらないという問題もあるにゃ。

サバゲー関係だと、カラーとサブデュード(低視認)に色を変えて好みに対応する方法もあるにゃ。 
 
 ああでもないこうでもないと図案が二転三転すればなると、「他の作業から作ろう」ってことになってしまい、納期は遅くなります。 正直データ作成で利益を上げることは考えておらず、刺繍機を動かしてナンボの世界ですから・・・。
 追加料金をいただきますとしても、「変形対策」や「縫い順番」などを複雑な要素を考えながら作ったデータですから、「やっぱりコレで」と話が二転三転すると、作る側としてはかなりテンションが下がるのも事実です。優柔不断であれ見たい、これも見たいというのは、正直しんどい作業になりますので・・・。

 かといって、
「手抜きしたい」わけではありません・・・良い製品をお届けしたいのですから、要望があれば対応いたします。
 修正ができるだけ出ないよう、調整をお願いしたいのです。

 作例の「めいどいん沖縄パッチ」も、修正がなかったかといえば、そんなこともありません。実際的な形になったとき、「やっぱりこうすればよかった」というのが出てくることもよくあるのです。
【最終的にできあがったイメージ画像】

めいどいん沖縄パッチでは・・・
☆sacom worksのマークの三毛猫(ラッキーキャット)が「まねき猫」をイメージしていたので、左手をまねき猫みたいに丸めた。
 (当初デザイン段階で、肉球にこだわりすぎた・・・)

→左手のパーツ一式をコピーしたり部分的に削除したりしたあと、糸を運ぶバイパスを設置。ラインや面、肉球を設置。


☆胸が無さ過ぎるという指摘があり、胸をちょっと大きくした(笑)

→エプロン(チェストリグ)全体を変形、ライン、面(迷彩パーツ3色)及びバイパス部分を変更。



このような作業を経て、テスト縫い→エラー修正→サンプル提出→本縫製→納品という流れになるわけです。

 
完成した「めいどいん沖縄」パッチ
こちらのページにて販売しております。
sacom works通販部
http://sacomworks.cart.fc2.com/

(11)見積もりについて

お見積もりはメールフォームに入力してもらう方法と
郵送やFAXで送っていただく方法があります。
カラーの図案をFAXにかけると、真っ黒になってしまうので気をつけてくださいね。
 
 
郵送の場合は、原画はお客様のお手元に。

必ずコピーを送ってくださいね。
 
 データ作成と同様、お見積もりにあたっても、できるだけ変更が増えないようお願いできると助かります。

 見積もり作業は営業行為であり、大事な作業であることも心得ているのですが、少人数(家族3名)で見積もりから縫製までの作業をこなしておりますので、何度も内容の修正があると辛い部分でもあります。
 枚数の増減については全く問題ないのですが、できるだけ内容の修正が最低限になるようご協力いただけますと幸いです。

 お見積もりにあたっては、
「ワッペンサイズ」と「参考になるイラスト」が必要となります。 
 特にサイズはワッペンの価格と仕上がり両方に影響しますので、大事な要素です。


(12)さいごに

 今回はsacom worksにて「刺繍の再現性」とともに、「いかにして刺繍に映えるデザインを作っていくか」という部分を、刺繍エンジニアとしての見解を交えながら述べさせていただきました。ついでに、このデザインを実際に刺繍として仕上げていくうえで感じたこと、考えてみたこともメモとして残しています。

 当然ながらデザインはもっと奥深いものであり、プロの方のご意見等もあると思いますが、「いいデザイン=いい刺繍には必ずしもならないこと」、また、「刺繍の制限を意識してデザインしていただければ、たとえイラストが得意ではなくとも良いパッチ・ワッペンのデザインができること」を考慮いただいたうえで依頼していただければ、きっと納得がいく仕上がりの、愛着のある、しかも長持ちするワッペンとなるのではないかと思います。

sacom works
(おわり)
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
 
 
刺しゅうワッペンをデザインするための参考になればうれしいです♪
コンテンツ コンセプト
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○ストーリー
【注意!】
○刺繍の制限
○下書き
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