sacom works【さこむわーくす】
 刺繍技術から見た「失敗しにくいパッチ・ワッペンデザイン術」その2
 〜完全刺繍の萌えミリタリーパッチを作る!〜
 手書きのお客様はもちろん、グラフィックソフトをお使いのお客様まで必見!!
 糸と記事で再現する刺繍です。刺繍にあったデザインをすることで、より美しい仕上がりになります。
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この記事はsacom worksブログ
(パッチ・ワッペン製作sacom works)に掲載した
「萌えミリパッチを作る」を再編集したものです。

コンテンツ コンセプト
○はじめに
○ストーリー
【注意!】
○刺繍の制限
○下書き
○サイズ
○外周処理
○フォント
○サインペンで
清書する方法
○着色の注意
○入稿形式
○修正の苦悩
 
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(2)デザインする  ・・・その前に!!

いきなりで申しあげにくいのですけど・・・

「デザインありき」の図案は上手くいかない

・・・ということだけは、皆さん頭の片隅に入れてくださいね。
 
 
え?
どういう意味ですか??
   
 作れるデザインと作れないデザインがあるの。
刺しゅうって印刷と違って、糸や生地などの材料の組み合わせ、特に糸の引張りとか縮みとか・・・いろいろ考える必要があるの。

それと、作ってはいけないデザインとかもあるし・・・。
「版権」「著作権」などの法律に抵触したり、トラブルを招くデザインやお仕事はNGよ。
 


 どんなに洗練されたデザインであったとしても、有名なプロの方がデザインされていたとしても、刺繍を行う基準に適合できない図案と判断された場合、着手できません。
 
制限が多すぎて大変ですが、これを踏まえることで、かなりスムーズかつ納得のいく仕上がりのパッチに仕上がりやすいと思います。

   
特にで書いているところは要チェックですよ♪
〜重要:刺繍の制限〜

(1)作りたいサイズを予め決める。 実用サイズで考えるなら10cm四方以下。

(2)ホツレ止めのために縁取りの設定が必要で、
縁取りに3〜4mm幅あるときれいにできる。

(3)大きくなるほど再現性が高くなるがコストも高くなる。小さくなるほどコストダウンできるが再現性が低くなる。
 (図案によっては細かすぎて刺繍できない場合がある。)

(4)刺繍面積を減らし、ベース生地を露出させることでコストを下げられる。

(5)ベース生地色は1色しか使えず、
生地色は少ない
 (難しい色に設定しない。)

(6)刺繍面積が大きくなるほど変形も大きくなる。しかし刺繍部分が少量過ぎても、模様に偏りがある場合全体的に変形しやすくなる。
 (70%程度まんべんなく刺繍されている図案が、変形対策・コストにおいて理想的)

(7)
線の太さは1.0mm(最低0.7mm程度)確保できると、滑らかな線が再現できる
 あまりにも細い線は角ばった線になってしまう(走り縫い・・・ミシンの縫い目のような縫い方になる)。

(8)前記(7)の制限を考えた場合、
ゴシック体のアルファベットで実測5mm以上、楷書体の容易な漢字で10mm以上(画数の多い場合15mm以上)必要

(9)グラデーションはできなくはないが、糸で再現するため思ったような滑らかさは得られない。
 (グラデーションを用いないほうが無難。)

(10)色数が多いほどコストが高くなる。パーツがひとつなぎ(一筆書き)になっている図案のほうが、低コストで作れる。

(11)
文字の縁取りは無いほうが綺麗に再現できる。
 印刷等では強調に使われるが、刺繍では糸同士がかみ合って模様がぼやける原因になる。
 
参考としては、スポーツ業界で縁取り文字が多く使われているのに対し、大手スポーツブランドのロゴには縁は使われていない。刺繍製品にした場合も考慮されたデザインなので、ブランドロゴがしっかりと再現される。

(12)
版権、著作権への抵触、過度にエロい表現、反社会的、問題のある表現は製作できない。

【最低限必要なパッチデザインの条件】

「文字が小さすぎる」「細かすぎる」というのはよくあるパターンです。
ピン角は作れなくはないですが、耐久性に劣ります。


  東京にて刺繍の講師をさせていただく機会がありましたが、刺繍は縫製でも印刷でもないという話をさせていただきました。
 今はPCでデータを作れば、ミシンがダダダーっと刺繍してくれますが、それだけではまず上手くいきません。
 そこで私は元々の本職である、土木建築技術になぞらえるようにしています。

 たとえば建築の世界で、広い空間を得たいからと柱を抜いちゃったら、構造的に持たない設計なら問題です。
 同様に安くしたいからと鉄筋を抜けば問題です(そういう偽装がありましたね)。
 構造上(設計基準や法律)問題ない中にデザインがあるから、はじめて建築デザインが成り立ちます。
 そこにコストも関わってくるわけです。

 ミリタリーパッチの世界では、、
「密に縫われて、糸の目が詰まっているいるのがよい」という、フリークの方の意見もありますが、過度に目を詰めると変形しちゃいますから、製作者側からすると薦められないことでもあったりします。変形しないようにあの手この手を加えるわけで、そのあたりが土木建築に似ていたりします。

色んな要素を考えたうえで、
「どこまで作れるか」ということを考えて、その基準にのっとって、刺繍のサイズを決めたうえではじめて刺繍ができる、というわけです。


なんだか、ややこしいですねぇ・・・(汗)
私にできるのか不安になっちゃいました。

 
 
技術的な部分は、ある程度任せてもらえれば大丈夫。
あとで紹介するサインペン法を使うと、技術的な部分はほとんどクリアできるよ。

一番多いトラブルは版権がらみかなぁ・・・
アニメとかゲーム関係の図案を持ち込んでくるお客様も多くて、断らざるを得ないことも多いの。

(3)デザイン画を書く  〜一発で仕上げようとしない!図案を十分に吟味する〜
【実録:こうやって描きはじめた】
   
ここからは、私がデザインされた過程を紹介しますね。


 実際にキャラクター刺繍を作るものとしてデザインを作っていく作業ですが、sacom worksのマークになっている
三毛猫スナイパー(元々は本業だった釣り船SEASNIPERのエンブレムでした)を女の子にしたら・・・というところから、適当に図案を描いていきました。実例として紹介いたします。
 ちなみに、一番好きな映画は”山猫は眠らない”の1です。2でがっかりしたので、3は見ていません・・・




ベケットさん 
 ミキ先輩、ベケットさんの擬人化だったんですね(笑)
 
だけど俺はオスの三毛猫だにゃ。
ラッキーキャットだにゃ。

沖縄方言では、三毛を「ミキー」って発音するから、ミキさんの名前が決まったのにゃ。

 女の子を書く作業は、顔や髪型など、好み以外の何者でもありません(笑)
 キャラクターがあふれている世の中、ダブらないオリジナルキャラを作るプロのデザイナーさん達には頭が下がります。

 余談ですが、関係者からのお話では、これだけキャラクターが乱立している状況、ある程度キャラがかぶるのは仕方がないところらしいです(笑)
 線引きが難しいところなんですが、青髪の長いツインテールで
「あれ、このキャラクター、アレですよね?」ってことにならないようご注意ください。



sacom worksの三毛スナイパー
元々は遊漁船SEA SNIPERの
エンブレムとしてデザインしたもの。

この図案は刺繍しやすいような要素
太い線が取り込まれている。

ラフスケッチ最初の一枚。
この時点ではハットをかぶっている。


 なお、どんなパッチのデザインにも、イラストではなく文章なんかにもいえることですが、何度も見直しし、修正したり書き直したりするのは大変有意義なことであると思います。
 地元の釣り雑誌でライターをしていたときは、最低でも10回読み直し、書き直ししていました。
 元の職場の上司の受け売りではあるのですが、この作業は後ほどデータを作るさいにも影響するので、適当な落書き段階で何度も書き直しします。あと、風景画を頼まれることもあったのですが、そのさいも下書きを何度か行ってます。


 おねがいします。  
できるだけ、データご入稿後に何度も図案を修正することがないよう、協力おねがいいたします。 

あくまでも、発注前段階で吟味していただきたいというお話なのです。理由は後ほど紹介いたします。


  イラストの書き方にはいろんな手法があろうかと思いますが、力を抜いてテキトーにです。
 すべて適当だと、いざ作るときに困ってしまうのですが、ラフスケッチ(簡単な下書き)よりももっと雑な、落書き程度でよいのではないかと思います。
 常に力を入れて描くと途中で疲れて嫌になってしまいます。
 写真のイラストは5分くらいで描いた落書き程度のものです。

 キャラクターを書いては消ししているうち、表情がよくなってきたり、または、色んなアイディアも浮かんできます。
 このパッチのデザイン中にも、色々アイディアが浮かびました。

 当初は、三毛猫マークの女の子版ということで、大好きなブーニーハットをかぶらせていたのですが、
「沖縄の刺繍屋仲間で地域活性化ができないか」という意味もあって萌えキャラ作りをはじめることになったため、どっかに「Made in Okinawa」と入れたい。メイドイン沖縄

・・・めいどinおきなわ=メイドさん!!

 という、しょうもない駄洒落を思いつき、
「三毛猫×メイドさん=猫耳メイドさん」に落ち着いたわけです(笑)

 また、ミリタリーパッチ屋sacom worksのコマーシャル用ですから、当然ながら銃器を携行。サイレンサーは好みです。
 あと、普通のメイドさんだとミリタリーじゃないので、エプロンの生地を迷彩にして、マグポーチやモールベルト(このあたりは軍事マニアしかわからない会話です)なんかも配置してみます。メイドさんというベースができてから、またアイディアが浮かぶわけです。 



3回目(左)、4回目(右)のスケッチ。
アタリ線(形を決める雑な線)を少なくしていきます。
輪郭や左手の肉級の位置が修正されています。

 先にキャラクターやデザインのストーリの話を書かせていただきましたが、書きなおしの段階で「駄洒落から生まれました」という、ストーリーも生まれました。
 こういうストーリーがちょっとづつ増えることで、より愛着あるキャラクター、またはエンブレムになるのではないかと思います。 
 なのでデザインを何度も描くことに、メリットを感じるのです。

 書いてみて「こうしたほうがいい」とか「これは追加して、これを削って」みたいな作業を繰り返していきます。
 納得いくまで、何度も下書きしましょう。
 鉛筆で書いて消す方法でもかまいませんし、書き直してもかまいません。PCに取り込んで作業したほうがよければそれでもかまいませんが、途中に
「サインペン清書」の工程を入れるとよいです。

 なお、作例では下記の修正を行い、その間4回ほど書き直ししています。
☆駄洒落からメイドさんに変更し、メイド服へ。メイド服は実はプレートキャリア(軍用のベストでいろんな装備が追加できる)になっているという設定。
☆「肉球が欲しい」ということで、肉球のエンブレムを入れようと考えたのですが、手を描くのがめんどくさかったので「グローブを猫にしてしまえ!」ということでエンブレムを削除。
☆猫っぽい鈴を首のワンポイントにと考えたものの、鈴は音がなるのでサイレンサーと整合性が取れない(そのミスマッチもあり・・・)ので鈴をやめてリボンに変更。
 リボンのほうが書きやすかったというのも理由。


私達って、しょうもない駄洒落から生まれたんですね・・・(汗)

なんか残念な感じです・・・
 
 
そんなこと言わないの(笑)

しょうもない駄洒落をもとに、ストーリーを継ぎ足して、パッチのデザインにフィードバックさせているんだよ。

(と言い訳してみる・・・)


 専門的な描き方については説明しかねますが、マンガやキャラクターを書く”デッサン”について解説している本を入手して、ちょくちょく練習して現在に至ります。
 最初は「まるばってん」から、骨格とか筋肉の構造などを意識して書いていくととても楽なのだということがわかります。最近オリジナルイラストを描いていますが、暇がないのが痛いです・・・眠れないときに書く。悪循環ですね(涙)

 これから本格的にパッチを作ってみたいという方は、こうしたデザインやデッサンに関する図書館などで借りてみたり、詳しい方から習ってみるといいかもしれません。
 興味持ったものは何でも学んでみると、難しい内容でも楽しいものです。

しつこく書きますが、刺繍の場合は、はじめにありました”制限”を念頭においたうえでデザインすることが、何よりも優先されます。
「デザインありき」の図案は、見積もり段階でコケます・・・。

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