sacom works【さこむわーくす】
 刺繍技術から見た「失敗しにくいパッチ・ワッペンデザイン術」その3
 〜完全刺繍の萌えミリタリーパッチを作る!〜
 手書きのお客様はもちろん、グラフィックソフトをお使いのお客様まで必見!!
 糸と記事で再現する刺繍です。刺繍にあったデザインをすることで、より美しい仕上がりになります。
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この記事はsacom worksブログ
(パッチ・ワッペン製作sacom works)に掲載した
「萌えミリパッチを作る」を再編集したものです。

コンテンツ コンセプト
○はじめに
○ストーリー
【注意!】
○刺繍の制限
○下書き
○サイズ
○外周処理
○フォント
○サインペンで
清書する方法
○着色の注意
○入稿形式
○修正の苦悩
 
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【サイズによる印象の違い】

 ギリギリのサイズでデザインを作っていなかったので、後ほどサイズ縮小することができた。8cmまで縮小すると文字に影響が現れるので、コストと再現性の両立は9cm程度でした。
 販売用は9cm版になっています。

(4)サイズと図案とコスト 〜パッチは大きすぎず小さすぎず〜
   
凝ったデザインにすると、1枚あたりの単価が高い、高価なワッペンになってしまいます。

一方、シンプルなデザインにして、サイズを小さめにすればコストを抑えることができますよ。
 
 
 今回は研究用と言うことで、サイズは大きめの直径10cmの円形で設計し、外周に3mm幅の縁取り、その内側にアルファベットの文字列が入り、その内側にキャラクターが入る形で考えました。
 なお、10cmのパッチというのはかなり大きなもので、10cm直径の8割を刺繍をしたパッチを10枚作った場合・・・


   (縫製1枚2500円前後 +ベルクロ等オプション)×10枚
 + 版代5000円(難しい図案)程度+テスト縫製1枚分2500円
 + 送料500円+サンプル送料80円
  =合計33080円
(1枚3310円・・・汗)


 ベルクロ代等除いても、1枚3000円以上のワッペンになってしまいます。価格の面でもお勧めできません。
 なので、あまり細かすぎないというのは大事です。製品版では9cmにサイズダウンしています。

 参考までに「何センチくらいがよいですか?」とよく質問がありますが、ずばり
50平方cm程度(注意:面積です。)が、コストと見栄えのバランスが取れて、また、大きすぎず小さすぎずのサイズだと思います。9cm×5.5cm 直径8cmの円形が、ちょうど50平方cmくらいです。

 文字にせよキャラクターにせよ、大きいほうがより精密に再現することができますから、文字列の帯部分を10mmで設計し、100mm−(外周3mm+文字の列の帯10mm)×2=74mmの円形にキャラクターが概ね収まる形にします。74mmの円形内に、胸から頭まで書く形にすれば、表情や線のなめらかさもかなり再現できるのではないかと考えたわけです。


(5)ワッペンの形と外周処理   3mm幅以上必要

 
 パッチの設計において考えるべき事項に「全体的な形状」があります。
 
パッチ・ワッペンの最大のウィークポイントは「外周処理」であり、全体的名形状は非常に重要となります。
 また、外周の処理には色々な加工方法がありますが、おさらいしてみます。また、最近から「ヒートカット」も導入しています。

パッチ・ワッペンの最大の弱点は外周・・・これを考えてデザインすると長持ちします。

メローエッジの断面
(中央のオリーブのラインより上)
きれいだが糸が弱く、ヒゲ状になる。

使いまくったワッペンのフチ
カットエッジ(ヒートカット)は芯が残る。
角が丸まってしまうのはどのパッチにも
共通するので、外周にフチを作らない
デザインにすることが大事です。

【ワッペン・フチの処理】
   
ワッペンとして機能させるためには、フチの処理が必要なのです。

ヒートカットをメインに、デザインや用途ににあわせて折込やメローエッジなどを使い分けしています。
種類 利点弱点
☆カットエッジ
(ハンドカット)
 フチを作って、余分な生地をギリギリでカットする方法。耐久性が高い。
 一般的なハンドカットは生地が多く残り、生地がほつれる。
 sacom worksカットはかなりギリギリで切る。洗濯時にホコリがからまるのと、芯地がフチに残るのが難点。
☆カットエッジ
(ヒートカット)
主に使用
 ヒートカッターと呼ばれる精度の高いハンダこてで焼ききる方法。現在のパッチはこちらが主流。
 切り口はハンドカットよりきれい(しかし芯地が少し残る)で、ホコリも溜まりにくい。
 焼ききることで溶けた生地が接着剤代わりになりほつれ止めになるが、レーヨン糸を使用するので、ポリエステル糸を用いるハンドカットより耐久性が弱い。
複雑な形状に対応可能。
☆メローエッジ
(ロックミシン加工)
 専用のロックミシンを用いた”密な巻きロック”。ミリタリーパッチ・・・たとえば米軍のインシグニアパッチなどに用いられているが、縫製業界のなかではミシンが絶版になっているなど、衰退気味で色数が少ない。切り口をつつむのでフチがキレイだが、耐久性はもっとも弱い(普通に使う分は大丈夫ですが・・・)。
 複雑な形が作りづらい(特に内角)。円形や四角形向き。
☆外周折込  外周を追ってベルクロ(マジックテープ)を縫うなどする。
 軍用ネームテープや階級章などに用いられる。耐久性は最も高い。
 四角形〜8角形に対応。角がふくらみやすい。

 
 今回作例では、サイレンサーと「めいどいん沖縄」のハンコ風の部分を円形からはみ出す形にしたいので、外周に3mm幅の縁取りを設定して、ヒートカットで焼ききる方法にしました。ロックで作った場合、サイレンサーの付け根が上手くいきません。ヒートカッターなら結構複雑な形も焼ききることができます。

 なお、四角形や多角形の形状で作るなら、「角をまるめた」ほうがよいです。
 ピン角で指定されることもありますが、恐らく壊れるとすれば角です。
 リボン状の帯を設置する図案もそれらしく見えますが、壊れるのはリボンの先端です。洗濯しているうちに丸まってきて、かっこ悪く見えてしまうこともあります。

【ミリタリーパッチ小話 「メローエッジ」の良し悪し】

 
ミリタリー業界においては、ワッペン・パッチ類の歴史(使用部隊や時期など)から、作っている地域やブランド、製法まで注意深く観察されているフリークの方もいらっしゃいます。
 なんとなくではありますが、”メローエッジ優位”という流れを感じます。
 ロックをかけられたメローエッジは切り口が包まれて大変綺麗であり、また、複雑な形状に処理されたメローの技術に惚れ惚れすることもあります。”インシグニアパッチ”と呼ばれる軍用の公式パッチにも、メローエッジが使われているのも一つの要因だと思います。

 しかしながら、メローエッジは糸の特性上、耐久性に劣るという弱点もあります。
 たとえば、サバイバルゲームで藪のなかを駆け回って草木に引っかかれば、最初に壊れるのは縁です。
 ベルクロ付きパッチを重ねれば、すぐにヒゲ状になります。洗濯してスレるだけでもどんどんホツれます。

 自衛隊にお勤めのお客様から伺う機会がありましたが、すぐにホツれてしまうメローに対して不満を持っている隊員さんもいるようです。
 (ホツれたパッチを付けていると、管理が悪いと上官から注意を受けることもあるようです・・・)
 コレクションとしてのパッチとして考えた場合、メローのほうがよいかとも思うのですが、実際に使うことを考えた場合、「何が何でもメローエッジ」というのはあまり良い考えではないと思います。

 sacom worksでは、現在は耐久性と美しさ、施工性を考えてヒートカットをメインに行い、要望によりハンドカット、メローエッジ等で対応させていただいています。

 
メローエッジは大量生産に向くというメリットもあって、多く流通するようになった・・・ということも考えられますね。

縁の処理方法ひとつとっても、奥が深いんですね〜。
 
今はメローエッジに使う専用ロックミシンがなくて、ワッペンメーカーはミシンを特注したり改造したり、工夫して使っているのにゃ。

メローロック糸の色種類が少なくなってるのは寂しいにゃ。
 


(6)パッチの構図と安定性・・・下部に重心を置くか、思いっきり逆三角形に

 文字の配置、全体の配置も非常に重要な要素だと思います。

 ひとつ心がけるといいのは、外周(ワッペン・パッチの形状)に角を作らないことと、「絵の重心は若干低目がよい」ということです。
 重心を高くするなら、逆三角形など思いっきり高くしたほうがよく、個人的主観でしかありませんが、上下にバランスよく配置されているか、下側に模様が寄っているくらいが「安定性」があってよい印象を受けます。

 あと、
変形防止を考えるなら「まんべんなく模様を配置」「適度な細かさ」があるとよいです。
 今回デザインしている「めいどいん沖縄パッチ」も、配置をまんべんなくバランスさせることで、全体的な剛性を持たせようという考えなのです。

(7)文字種類(フォント)について


 
「文字は大きめに」「文字数は少なめに」を心がけると、綺麗で価格を抑えたワッペンになります♪

よくある文字の縁取りは、できるだけ避けたほうがいいかも。
 
 
 え、何でですか?
文字の縁取り、強そうでカッコいいのに。
スポーツ系とか多いですよね?
   
刺しゅうは糸と生地の組み合わせにゃ。
縁取りは”刺しゅうに刺しゅうを重ねる”ので、どんなに対策をしても糸同士が噛んで刺しゅうがぼやけるのにゃ。
 
 
 そっか♪
普通は、縁取りがあると強調されるって考えちゃいますけど、刺しゅうの場合は違うんですね。
 
詳細は下の解説で・・・。

「アルファベット5mm以上」「漢字10mm以上」は最低限心がけていただければ、だいたい大丈夫です。

ネーム用フォントには限りがあります。楷書体がお勧めです♪
 
 
 
 文字は色々と入れたくなりますが、
文字のサイズ(太目のゴシック体のカタカナで5mm以上、楷書体の簡単な漢字10mm以上)にも注意したうえで配置していきます。
 6mm程度のアルファベットを配置する帯を設置するなら、帯の幅は10mm程度あったほうが、あとで調整が必要となった場合作業しやすいです。

 文字種についてはいろいろありますが、細い文字(明朝体など)は避けたほうがいいです。
 上記「刺繍の条件」にある細い線の基準に合致しないためです。
 ゴシック体のほうが綺麗にできますが、急カーブが多い書体(インパクトなど)も作りづらい文字です。



 
文字数が多すぎると当然ながら手間がかかり、その分コストを上げざるを得ません。
 海外を中心に渡り糸(模様と模様の間の糸)を切らないケースが多いですが、sacom worksでは専用のハサミでカットします。


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